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……孫たちが近寄ってきて、言う。 ねえ、生き物がこんなふうになってしまうと分かっていたのに、なぜ、何もしなかったの?そのとき我々は、人間がこんなふうになるのを確かめるために待っていたのだよ、と言い返すことができるだろうか?孫への答えはノーであると、私は思う。
この賭けはあまりにもリスクが大きいため、結果が出るのを待てるとは信じられない。 それに私は、二○年後のことを想像することができる。
我々は待つべきではない。 すぐに何かを始めるべきなのだ。
(A博士官BC「ホラィゾン」1996)(『奪われた未来を取り戻すために.ホルモン阻害と塩化ビニル』グリーンピース・ジャパン発行)わが国では、現在、日常生活によりつくりだされる一般廃棄物、いわゆるゴミの年間排出量は、およそ五○○○万トンです。 これは東京ドーム一三五杯分ほどになるということです。
また、産業活動にともなって生じる、いわゆる産業廃棄物は、年間およそ四億トンにもなります。 これは私たちがつくりだすゴミの量の約八倍という多さです。
毎年、このような多量のゴミを出しています。 狭い国土にもかかわらず、多数の人々が生活しているのですから仕方がないのかもしれません。
しかし、できるだけゴミを出さない社会にすることは必要です。 ましてや、これらのゴミの焼却処理過程でダイオキシン類が発生するのですから、問題は複雑です。

しかし、これは、今後の重要な研究課題の一つでありますし、これからのいろいろな視点からの研究により解明されることです。 重要なことは、私たちの生活にとってまったく不必要なダイオキシン類が、このような不安を抱かせる状況にあるということです。
なぜ、このようなことになってしまったのでしょうか。 このことにつきましても、理解していただけると思います。
この現状を踏まえて、何をどのように解決するのかということが最も緊急な課題です。 そのためには、私たちのこれまでの価値観や教育観、それから人生観までも変えなくてはいけないかもしれません。
つまり、それだけダイオキシン類や環境の問題が重要であるということです。 そこで、ダイオキシン類とはどのようなものであるのか、その正体を知っていただくために、その毒性などについて概説します。
次に、現在の環境や人体の汚染レベルとその健康への影響について解説します。 そのなかで、アトピー性皮膚炎と子宮内膜症の発症とダイオキシン類との関連性につきましては、かなり大胆な仮説が展開されています。
しかし、ダイオキシン類による環境や人体の汚染と健康への影響について、早急に警鐘を鳴らし、その対策などについてより多くの方々に考えていただきたいという「ダイオキシン問題を考える会」の主張は理解できますし、とても大切なことです。 一九九四年にアメリカで一冊の本が出版されました。
直訳すると「われわれの盗まれた未来」ということになりますが、日本語訳が出てないこともあり、ここでは『奪われた未来』としておきましょう。 この本は発売きれると同時に、アメリカで大反響をまき起こしました。

それというのも、まさしく「奪われた未来」を予見するものだったからです。 この本は三人の手によって書かれていますが、中心的役割をなしているのは、テオ・コルバーンという女性です。
五○歳まで看護婦をやっていたテオ女史は、「何か人の役に立つことを」と思いたって環境問題の研究を始めたところ、ある種の合成化学物質の危険性に気がつき、世の中に警鐘を鳴らすべく、その研究成果を一冊の本にしたのです。 内容はじつにショッキングなものでした。
PCB(ポリ塩化ビフェニール)やダイオキシンに代表される汚染物質は深く静かにわれわれの体内に蓄積し、ホルモン系に作用して、人類や動物の生殖機能や免疫機能を冒しているというのです。 その結果、あるときにはガンを引き起こし、あるときには奇形を引き起こす、さらには胎児に影響して次世代に悪影響を与えるというのです。
この本がアメリカ社会にどれほど大きなショックを与えたかは、アメリカのゴア副大統領が特別な序文を寄せたことでおわかりいただけると思います。 ゴア副大統領は、その序文のなかで、テオ女史の警鐘に対して、国家科学アカデミーにおける特別調査委員会の設立を宣言したのです。
こうした反応は、日本では考えられないことです。 現役の政治家が、一般庶民の声に具体的な政治行動(公約)をもって答えるなどということはありえません。
もちろんアメリカでも稀有なことですが、本の発売から二年後とはいえ、現役の副大統領が具体的な回答を提示したことは、この本が、そうしなければいけないほどの切実さと危機感を提示していたからにほかなりません。 臨床医学的な証拠という面から見れば、テオ女史の提出したデータは必ずしも十分なものではありません。
しかし帰納的に考えると納得せざるをえない状況証拠が、これでもか、これでもか、とばかりに羅列されています。 ゴア副大統領の序文もまた、応答姿勢と同時に、真筆にしてすばらしいものでした。
化学殺虫剤の害を世界で最初に告発したレイチェル・カーソンの名著『沈黙の春』に匹敵する書であることを称賛しつつ、率直に内容を認めています。 ゴア副大統領は、テオ女史らが指摘する各種の工業化学薬品は、世界経済を底辺から支えているものだけに、その不都合を指摘することは世界中の議論を呼び起こすであろうと危倶しながらも、次のように序文を結んでいます。
少し長くなりますが、その末節を紹介しましょう。 「奪われた未来」は、答えなければいけない真剣にして急を要する問題点を指摘している。

それゆえに国家科学アカデミーは、その脅威を判定する委員会を設立した。 これは重要な一歩である。
われわれはその研究を通して、化学物質が害となるメカニズム、ほかの化学物質もそのような害を与えるものなのか、そしてわれわれとわれわれの子どもがどれだけ汚染されているのかを知る必要がある。 さらに汚染という目に見えない害の存在を理解する必要がある。
われわれはこのようなホルモン様の活性物質によって引き起こされる先天奇形や、発達異常のリスクが高いと思われる子どもを守る方法があるかどうかを考えなければならないし、人類全般と生態系に対する影響についても調査しなければならない。 もちろん完全に危険のない社会をつくることはできないが、最小限、アメリカ市民は自分たちと自分たちの子どもがさらされている物質およびその危険性を知る権利があります。
それにしてもわれわれは、科学的に知りうる危険に対して疑問を持つことに時間をかけすぎたようだ。 そしてまた気候の変動の脅威(温暖化)に対して、あまりにも鈍感すぎたようだ。
この本が難しい内容でありながらもよく売れたのは、身震いするほどの鋭い指摘に満ちていたからです。 何気なく使っているさまざまな化学物質や、無神経に燃やしているゴミの煙のなかに、環境を根源的に汚染し、人間を含むあらゆる生命を脅かす物質があることを気づかせてくれます。
日常生活のゴミや塩素系プラスチックなどを焼却したときに出るダイオキシン類。 各種の殺虫剤。
製造中止にはなったものの、依然として環境汚染を引き起こしているPCB。 食物の包装材料に広く使われているフタル酸化合物…。


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